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バイブルエッセイ

神さまの平和

愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、 兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい。 怠らず励み、霊に燃えて、主に仕えなさい。 希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。聖なる者たちの貧しさを自分のものとして彼らを助け、旅人をもてなすよう努めなさい。 あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい。祝福を祈るのであって、呪ってはなりません。 喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。互いに思いを一つにし、高ぶらず、身分の低い人々と交わりなさい。自分を賢い者とうぬぼれてはなりません。だれに対しても悪に悪を返さず、すべての人の前で善を行うように心がけなさい。 できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。   (ローマの信徒への手紙12・9―18)

 日本福音ルーテル教会では、8月の第1日曜日を平和の主日としています。私は牧師となって今年で15回目の平和の主日を迎えますが、毎年この主日を迎える時、平和とは何かについて考えさせられます。特に2011年、つまり東日本大震災が発生してからは、毎年被災地の平和について考えています。
 今から約8年5ケ月前に発生したこの震災によって15897名の方々が一度に天に召され、未だに2532名の方が行方不明です。(2019年6月10日警察庁調べ)そして、震災後に震災関連により天に召され方は3723名に上ります。(2019年3月31日復興庁調べ)また、仮設住宅等に避難されている方は50665名、内36674名の方が県外避難を余儀なくされています。(2019年6月11日復興庁調べ)
 あらためてこの数字を見る時、その数字の大きさに驚くと共に、その数字一つ一つに隠されたひとり一人の人生が私の平和への思いをより強くさせます。
 平和、それは、やすらかにやわらぐこと。おだやかで変わりのないことです。
 今から、約8年5ケ月前、東日本大震災の被災地では、この平和が一瞬にして奪われ、多くの人の命や人生も奪われてしまったのです。そして、遺された人たちの人生をも大きく変えてしまったのです。
 私はこの震災発生後、ルーテル教会救援派遣牧師としてルーテル支援センター「となりびと」で2年間、支援活動を担当しました。そしてその活動が終了してからは、個人的な支援・交流を含めて、毎年のように女性会連盟や東教区女性会の方々と共に「となりびと」の支援先を訪問しました。昨年は、夏休みを利用してはじめて個人的に訪問もしました。(詳しくはルーテル教会救援「となりびと」ブログlutheran-tonaribito.blogspot.comをご覧ください。2019年7月1日現在アクセス数364162)
 昨年6月、女性会連盟総・大会で報告の機会が与えられた時、その報告のために現地の支援先にお電話をし、仮設住宅に住まわれている方々がいよいよ災害復興公営住宅に入ることができるという福音に与かりました。皆さんにも沢山購入していただきました布草履を制作していた「石巻なごみ会」の方が住む仮設追波川河川団地の方々は、昨年6月9日(土)に災害復興公営住宅の新しい部屋の鍵を受け取り、順次引越しを開始されていました。この団地に住まわれる方々は、一つの学校としては最大の犠牲者(児童74名、教職員10名が死亡)を出した大川小学校校区の方々が住む仮設団地です。また、つるしびなを製作・販売していた雄勝「華の会」の方々が住む仮設追波川多目的団地の方々も昨年の7月末には災害復興公営住宅に入居することができました。昨年、自立再建の一部の方を除いて、「となりびと」の支援先の仮設住宅入居者は全員、災害復興公営住宅に入居できたのです。
 先日、今回の説教を担当するにあたり、支援先の方々にその後の生活についてお尋ねしました。そのお応えからは、今から約8年5ケ月前のあの出来事とは正反対のまさに、やすらかな、やわらぎのある、おだやかな生活、つまり、平和な日々を過ごされていることを私は、実感したのです。
 私は、この約8年5ケ月の間、「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」のみ言葉により、被災地の方々と共にありました。そして、これこそが神さまの平和の在り方なのです。
 最後に昨年、雄勝「華の会」の方からいただいたお手紙(一部抜粋)を紹介し、この説教を閉じたい思います。

 「あの東日本大震災から7年がたちますが、長い年月、野口さまにはいっぱいご支援をいただき誠にありがとうございました。感謝でいっぱいです。私達お陰様で仲間と楽しくつくれることの幸せを感じました。失った物も大きかったが皆様方から暖かい心で見守ってくださり、どんなにか勇気づけられたことでしょう。いつまでも忘れることはないです。これからも頑張って生活していきます。なお、来石の際はお声をかけて下さい。華の会一同感謝しています。まずはお礼まで」

日本福音ルーテルみのり教会 牧師 野口 勝彦

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