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るうてる2025年

るうてる2025年1月号

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ザアカイさん家の食卓

日本福音ルーテル市川教会牧師 中島康文

「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」ルカによる福音書19・5

 「あなたの家に泊まりたい」と言われて、ザアカイは一瞬耳を疑った。急いで降りながら、「確かにあの方は『ザアカイ』と自分の名を呼んでくださった。しかも、泊まるって!私の家に!」
 ザアカイは徴税人であった。ユダヤの地を支配していたローマ帝国は、その地に搬入される物品に税を課していたが、その税を取り立てるのが彼らの仕事であった。彼らはまず、取り立てるための権利を買い取らねばならなかった。課税額は任されていたので帝国が要求する額以上で取り立てることを許されていた。だから、そこに生じる利幅が徴税人の取り分となり、その額を決めるのは権利を買った者が自由に決めることができた。取り立てられる者は、苦々しく思いつつも従うしかなかった。だから徴税人は憎まれた、二つの理由で。一つ目は支配する者たちのために働いているということ、二つ目は支配しているローマ帝国は異教徒であり、異教徒と交わる背教者だということで。その結果、憎まれた徴税人は、「罪人・異邦人と同様」と見下すことでユダヤ人は留飲を下げるしかなかった。ザアカイは徴税人、しかもその頭だったのだ。
 いつもの彼は誰と食卓を共にしていたのだろう。木から降りた彼はこう言った、「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」と。これは彼が持っているもののほとんどを差し出すに等しい。それほど大きな決断を即座に行うほど、「泊まる」と言ってくださったことがうれしかったのだ。罪人と同様に扱われ、背が低くて主を見たくても「みんなの前においでよ」と声を掛けてくれる人はおらず木に登るしかなかった彼と、食卓を共にする者は誰もいなかった。一人で雇い人の作った(もしかしたら自分で作った)食事を、黙々と食べるのが日常であったと想像するに難くない。「泊まる」とは「あなたと一緒に食事しよう」と言ってくださったと彼は受け止め、そのうれしさのあまり主に申し出たと思えてならないのである。
 その日のザアカイさん家の食卓のにぎわいは、聖書には記されていないが、想像することは許されている。食卓には「イエス様ご一行」が居て、ワイワイガヤガヤにぎやか。全てを差し出したことの後悔など生まれる余地は何処にもない顔で、にこやかな笑顔で主をもてなすザアカイさん、と想像するのは楽しい。
 話しは変わるが、私は進路に悩んでいた10代後半、久留米教会の故内海望牧師家で夕食時の食卓を一緒にしていた。下宿していた私を心配した母が、無理やり(?)頼み込んでくれたからだ。楽しかった、あの食卓に着くのは。夕食だけの約束だったのに、いつのまにか朝食にも顔を出すことがあった。先生はにこやかに受け入れてくださった。進路が定まらないまま上京し、市川教会に通うようになり、礼拝後にはちょくちょく牧師館に入り込んでは食事をごちそうになった故古財克成牧師家の食卓も忘れられない。食卓が「牧会」の場だったと、今の時代には合わないかもしれないが、そう思えてならない。
 ルター家の食卓も、どうやら同じようであった。だから「卓上語録」などという、ルターが食卓で語った言葉を、食卓にいた誰かがメモして、それが後世に残され書物になるほどなのだから。
 ザアカイさんに始まる「食卓牧会」、それを大事にしてきた私たちの教会だが、時代は変わった。プライバシーのこと、そして何よりコロナ禍による「集う」事への懸念。かつては牧師館に入り込むような「食卓牧会」だったが、今の時代には即さないことは分かっている。しかし食卓を囲む、いや食卓に集う喜びは、いつの時にも変わることのない喜びなのだと心に刻んだままで、43年間の現役から引退する。引退後も、どこかで「食卓」を囲みながら、ワイワイガヤガヤ過ごせたらと願っている。一緒に「食卓」を囲んでくださった皆さまに感謝しつつ。

エッセイ「命のことば」 伊藤早奈

(58)「そうだったのかなぁ」

「何事にも時があり 天の下の出来事にはすべて定められた時がある。」コヘレトの言葉3・1

 「なんでだろう」ってずっと思っていました。私が地方に行く時に「行ってきます」と言ったら「うん」と言って送り出してくださったのに。なんでだろう。私の身近な大切な方が亡くなられた、それは何年も前、私が他県へ行った時、都内で亡くなられた。その方はがんの末期で自宅におられて容体が悪くなりホスピスへと運ばれ亡くなられたらしい。安定しておられると思って出かけたのに。後悔で私の心はいっぱいになっていました。
 最近出会った文章に救われた気がしたものがあります。その方はお医者様で、お若い頃にがんでご伴侶を亡くされたそうです。「なぜあの時、最期をみとってあげられなかったのか」と何年も後悔されていたというのです。というのも奥さまが最期を迎えた時、看病をしておられた家族全員が眠り込んだ時間を見計らうかのように、一人で静かに逝かれたそうです。その方が最近見られた映画で「人は亡くなる時を自分で決めて旅立っていく」というせりふを語られ、亡くなる時間も場所も、誰かと一緒にいたいか、あるいは、一人で逝きたいか、全てを患者本人が決めると語られたようだと文章にされていました。
 そして医師として多くの人生の最期に立ち会った彼は、亡くなる時を亡くなろうとしている方がご自分で決めて旅立っていかれるなら、死も怖くないかもしれないと続けておられました。私の大切な人も一人で逝きたかったのかもしれない。そのように思えた時、「神様と相談されたのかなっ」と思えました。

「全国の教会・施設から」⑳

日本福音ルーテル八王子教会 山本香児(日本福音ルーテル八王子教会代議員)

 八王子教会は全国レベルの開拓伝道の一環として準備された教会です。最初の礼拝は1970年8月2日でした。初代は南里卓志牧師、新しい伝道の模索として当初、維持献金は制度自体無く、式文も用いず礼拝が守られていました。第2代の三浦謙牧師の時代でも役員会もオープンで意見したい会員は客員でも出席可、かく言う筆者も当時、教籍は大阪教会のまま役員会に出席したものです。これが一般的なルーテル教会に近づいたのは第3代の高井保雄牧師の頃、90年代でした。そのころまでは教勢も順調でした。創立以来ご尽力いただいたJ・リビングストン宣教師の退任あたりから、教会は街の退勢とともに歩むようになりました。
 それから30年余り、そしてコロナが襲います。東京に非常事態が宣言されたのは転任、着任された中村朝美牧師の下、最初の礼拝が行われた翌日でした。次の日曜日から礼拝は原則配信、聖書箇所、説教などを印刷した臨時の教会報を週刊で発行することが3カ月続き、7月に元の体制に戻りました。どこも経験無い対応に追われている最中でも中村牧師は次の布石を打つよう、兼牧に対応できるようにと当初からおっしゃっていました。そして中村牧師引退後、これが生きます。現在、坂本千歳牧師が嘱託として赴任する兼牧体制となりました。教会の内外は様変わりも、自由で、入りやすい雰囲気は今も維持できていると自負しております。また坂本牧師の提案の下、障害者施設のあけぼの会のメンバーも礼拝当番などで活躍してくれるようになり、教会としての一体感は過去最高です。明日は11月17日の日曜日、あけぼの会の皆とクリスマス飾りを描きます。インパクトで負けないよう、絵筆も新調、楽しみにしています。そうや、皆で食べるカレーも作らんと・・・。

白羊保育園 愛泉保育園 成松恵子(白羊保育園前主任保育士)

 本園は、熊本市西部の緑豊かな町に位置しています。春になると、花びらが白く、新緑の葉が花と一緒に開花する「千原桜」という美しい桜が咲く町です。保育園にも千原桜が3本あり、卒園・入園の時期には満開となり、子どもたちをお祝いしてくれます。心に残る風景だと思います。
 白羊保育園は、今年で創立78年になります。初代園長は坂本喜美子先生。昭和20年、敗戦の混乱の中で「寂しい時も、怖い時も、子どもたちの中に、いつもイエス様がともにいて下さることを知らせることができますように」と祈りながら、子どもたちの健全な成長を願い、「子どもの家」の思いで保育を始められました。
 昭和23年に「白羊保育園」と命名され、児童福祉法による保育園として歩み始めました。現在定員90名の子どもたちが在籍しています。
 78年の間に保育方法はさまざまに変化していきましたが、祈ること、賛美すること、聖書のお話を聞くことは変わることなく、保育の中に必ずありました。職員も一日の始まり終わりに祈ります。子どもたちが園で経験した祈り、賛美、聖書のお話で感じたことは、これからの生活の中で支えになってくれることでしょう。
 白羊保育園は、「信仰・希望・愛」この三つの言葉を大切にしています。この言葉を「神に祈り、感謝する心を育てたい。何事にも意欲的に取り組める子どもに育てたい。人を思いやり、互いに愛し助け合う心を育てたい。」との願いにして、日々保育をしています。これからも神様と共に歩み続ける保育園でありたいと思います。

改・宣教室から

小泉基宣教室長(日本福音ルーテル札幌教会牧師)

小泉 今年最初のインタビューは、いま3月のキャンプ準備の真っ最中。春の全国ティーンズキャンプ(以下春キャン)のスタッフ、森田哲史先生(日本福音ルーテル大森教会牧師)にご登場いただきました。先生は、いつ頃から春キャンにかかわっておられるのですか?

森田 大学1年生の時に安井宣生牧師にお誘いいただき、関わることになりました。主にプログラムを作成する係として大学卒業までスタッフをしていました。大学卒業後はなかなか関われませんでしたが、神学校に入り再びスタッフをさせていただくようになりました。

小泉 今年のティーンズキャンプには、どんな意図やねらいがあるのか教えてください。

森田 コロナ以前の春キャンは、長年の積み重ねによりリピーターも多く、プログラムの初日から話しやすい環境が出来ていました。しかし、中断によって春キャン未経験の世代が増え、参加のハードルが高くなっていると感じています。そのため、今年のキャンプは、この15年ほどディスカッションが中心だったものを、体験を中心としたものにしています。農業体験を通して神様の恵みを感じることが出来ればと思っています。

小泉 先生は、はじめは参加者としてティーンズキャンプに参加なさったと伺いました。ティーンズの頃にはどんな印象をもっておられましたか。またスタッフをなさるにあたっての思いをお聞かせ下さい。

森田 スタッフの皆さんがお兄さんお姉さんとして、あらゆる面で導いて下さったように思います。献身したことも春キャンでの経験が大きく影響しています。私自身も参加者にとってお兄さんのような存在でありたいと思っています。

小泉 全国の教会や参加してくるティーンズたちに、いま伝えたいことがおありですか?

森田 春キャンに初めて参加した時に、ルーテル教会にこんなに同世代がいるのかと驚かされました。春キャンは、学校とも家族とも違う生涯の仲間が与えられる場所であり、一人では弱い私たちを支え合える場所なので、ぜひ参加をお待ちしています。

小泉 どうもありがとうございました。最後に、先生が大切にしておられる聖句を教えていただけますか?

森田 ローマの信徒への手紙3章10節の「正しい者はいない。一人もいない。」です。ティーンズ世代には、たとえ弱く正しくない自分であっても赦してあげて欲しいと思っています。

山内量平探訪記⑫ (最終回)田辺と佐賀に残る記念

古屋四朗(日本福音ルーテル日吉教会会員)

 私は2023年4月に山内量平先生の足跡をたどりましたが、この旅行の一番大切な訪問地は、日本キリスト教団田辺教会の墓地でした。教会墓地のほぼ中央に、量平・幹枝夫妻の墓があります。
 量平は、大正7年(1918年)に大阪教会を最後に引退して、田辺に戻りました。帰郷後間もなく、同年11月11日に天に召されました。70歳でした。幹枝も、後を追うようにして12月24日に56歳で召されました。
 墓の横には、後にルーテル教会が建てた記念碑があり、こう刻まれています。
「主ニ在リテ終末ノ日ノ復活ヲ待チツツアル故牧師山内量平氏ハ、本教会ガ明治廿六年(一千八百九十三年)四月佐賀市ニ宣教ヲ開始セル際ノ最初ノ日本人教職デアツテ佐賀博多大坂三教会ノ創始ニ當ラレタ誌シテ記念トスル
昭和三十一年四月二日
日本福音ルーテル教会建之」
 ところで私は、図らずも2023年9月に、量平がルーテル教会での伝道を始めた佐賀教会を訪ねる機会がありました。礼拝堂の裏に、「山内家累代」、「山内家親族」および「山内家外戚」を記念した三つの碑がありました。量平は、宣教のためとはいえ、歴史ある山内家の当主の責任を捨てたことに対し、何かけじめをつけたかったのだろうかと、感慨深いものがありました。
 田辺と佐賀に残る記念物(写真)をご紹介して、この連載を終わります。

世界の教会の声

浅野直樹Sr.(世界宣教主事 市ヶ谷教会牧師)

気候変動への取り組み

 気候変動対策を話しあう国連会議締約国会議(COP)29(以下COP29)が2024年11月にアゼルバイジャンの首都バクーで開催されました。LWFは会議に代表団を派遣し、気候変動の影響を最も受けやすい人々を支援する具体策を呼びかけました。

 2023年は世界が最も暑くなった一年として記録されたのですが、2024年はこの記録を塗り替え、パリ協定の基準値である産業革命以前のレベルを1・5度以上上回ってしまう最初の年になるであろうと予想されています。LWFは12人の代表団を開催地バクーに派遣し、さらに26人がオンラインで参加しました。そしてエキュメニカルなキリスト教団体のみならず他の宗教者たちと信仰者の声を届けました。

 初日にはエキュメニカルなキリスト者の祈禱会がオンラインで開かれ、COP29を覚えて祈りました。12日にはタラノア対話の精神のもと、現地のバクーで他宗教者とともに非公式の宗教者対話が行われました。このようにLWFは、COPのテーマに沿ってさまざまな関連イベントを主催あるいは参加しました。

 今年の会議の主眼は、気候変動対策のための資金を容易に利用できるようにすること。LWFの気候問題主任のセディロさんは次のように言っています。「今回の会議では財政面での明確な方針を示すことです。ゴールや目標を達成できなかった過去の経験から私たちは学ぶべきです。極端な気候の影響を最も受けやすい地域のために気候変動対策資金は用いられるべきなのです。影響は今後さらに大きくなるので、そうした変化に直面している人々の支援を急ぐ必要があります。」

 「信仰者として私たちは全領域に目を配ります。メンタルヘルス、土地と森林の劣化、海面上昇、生物多様性の喪失といった問題が世界にどのように影響するのかなど。こうした話題が、気候対策資金の活用法をめぐるテクニカルな議論に隠れてしまい、ないがしろになりがちなのです。LWFはこうしたテーマを議論のテーブルに載せようとしています。信仰的側面からこうしたことは大変重要です。資金は現場の人たちのニードに応えるように用いられる必要があります。」

 「LWFは若者たちの活躍とリーダーシップで、気候問題対策においてユニークといえます。」そう話すのはユース部門担当のサバンナさん。LWFはこれまで加盟教会の若者たちをCOPの代表団として何度も派遣しています。「彼らは神学と福音をベースに霊的な立場からこの働きに取り組んでいます。彼らの声は各地域の課題だけでなく、その根底にある信仰レベルでも伝わり、変化を促し、働きを強めています。」

 「気候変動会議への参加は、現場の声とグローバルな視点をリンクさせふたつを結びあわせているので、気候対策を考えるうえで不可欠なのです。」今回が4度目の参加となるリバープレート福音教会のドーマンさんは、会議に参加する意義をこのように語ってくれました。

詳細はこちらから

日本福音ルーテル教会のカンボジア宣教への期待

浅野直樹Sr.(世界宣教主事・市ヶ谷教会牧師)

 11月初旬にLWF主催の教会指導者会議が香港で行われ、そこでカンボジアルーテル教会のスレリャック監督とお会いすることができ、今後日本福音ルーテル教会(以下JELC)が進めるカンボジア宣教に寄せる期待を語ってもらいました。

浅野 正式なお名前を教えてください。
スレリャック氏 名前はSreyliak(スレリャック)、名字がTouch Keov(トゥック ケオブ)です。

浅野 カンボジアルーテル教会の歴史について教えてください。
スレリャック氏 シンガポールルーテル教会の宣教によって2010年に誕生し、現在は自立しています。礼拝が行われている教会は四つです。今後あと三つの教会ができる予定で、それらができると七つになります。牧師の数は今は5名で、まもなく2名が按手を受けます。他に3名の神学生がいます。

浅野 神学教育はどのように行っていますか。
スレリャック氏 プノンペン バイブルスクールで実施しています。地方の神学生は通うのが大変なのでオンラインで履修しています。科目は大きく分けて説教、聖書研究、ルーテル教会について、リーダー養成講座です。卒業して学位を取る人もいますが、遠くて通えない人向けに4年で履修できるコースもあります。

浅野 JELCは今後カンボジアでの宣教を考えていますが、どんな期待がありますか。
スレリャック氏 米国のルーテル教会(ELCA)が子ども向けのプログラムを用意してくれています。それをどう用いるかが私たちの課題です。ですからひとつは、子どもを指導する教師たちに教え方を指導してもらいたいです。 二つ目は、農業技術の指導です。信徒たちの多くが農民なので、彼らに効率的な農作業のやり方などを教えてもらいたいです。三つ目は、若者の能力を高めることを期待しています。そのための交流プログラムがあるとうれしいです。

浅野 今着ている牧師用シャツの柄が独特ですね。なにか意味があるのでしょうか。
スレリャック氏 これは地元のクメール人による手製のシャツです。格子模様は伝統的なものでクロマーと言います。
浅野 お話をありがとうございました。

ルーテル世界連盟アジア教会代表者会議in香港報告

永吉秀人総会議長(日本福音ルーテル東京池袋教会牧師)

2024年11月7日から12日までの6日間、ルーテル世界連盟(LWF)アジア教会代表者会議(ACLC)が香港で行われました。テーマは「希望・HOPE」を分かち合うことです。
 参加国は日本からパレスチナまでの諸国であり総勢107名を数える大きな会議でした。日本福音ルーテル教会からは私と通訳者として浅野直樹Sr.牧師(市ヶ谷教会)、そしてLWF理事の青年代表として本間いぶ紀さん(甘木教会)の3名が参加しました。会議にはオーストラリアやパプアニューギニアも含まれており、ゲストとしてLWF議長(デンマーク)、アメリカ代表、ノルウェー代表も参加しました。ネパールからの2名は香港へのビザが下りず参加できなかったとの報告でした。
 エルサレムにはルーテル教会がありますが、そこからの代表も2名参加しており、国籍を聞きましたところ「ヨルダンとホーリーランド(聖地)から」との回答でした。彼らは全体に対し「パレスチナの痛みを伝えに来ました」とスピーチされました。アジア圏のルーテル教会の二大勢力はインドネシアの600万人とインドの450万人と言われています。どちらも十数名ずつの参加でした。その二大勢力の圧力はすさまじく、アジアの情熱を感じさせられました。
 香港からのレポートでは、「香港は希望を失った。霊が弱まった」との発言があり、民主化運動後に30万人が海外へ流出し、教会も16パーセント減少したと報告されました。会議全体のムードとしては希望を力と数でつかみ取って行こうという熱気にあふれていました。その一方で、、分団では日本におけるカトリック教会や聖公会との連帯の中で「痛みに寄り添う教会」としての一致が目指されていることを紹介しました。「たとえ我らが霊や希望を見失ったとしても、神の霊が私たちを見失うことはなく、私たちが神の希望であることに目覚めて出かけて行く時に希望は実現する」と発言したことに対して、台湾や中国の参加者からは、「新鮮な響きに聞こえたが考えさせられた。」とリアクションをいただきました。
 私にとっては44年ぶりの香港でしたが、かつての車の排ガスのにおいやクラクションは街から消え、中国の電動自動車化による環境改善に驚きました。

明日に備えて―関西地区防災講演会の報告

秋山仁(日本福音ルーテル豊中教会・神戸東教会牧師・喜望の家代表)

 10月20日(日)午後4時~6時、豊中教会を会場に、西教区関西地区主催の防災講演会が行われました。そもそもは、豊中教会が5年前から豊中市の南桜塚校区防災部会(自主防災組織)に参加したことから、災害時に教会が地域の防災に資する働きについて一緒に考える機会を持ちたい思いで、地区に呼びかけたものです。
 講師は、2016年4月14日~16日にかけて発生した熊本地震の際、熊本市の健軍教会に赴任されていた小泉基牧師(現札幌教会)。小泉牧師は、健軍教会に(私設の)避難所を開設し、ほぼ1カ月半にわたって、教会周辺の被災された方々と共に、生活再建のために働かれました。講演では、小泉牧師の経験から、地域での災害時における教会の働きについて、お話いただくこととしました。ただ、講演会当日が日曜日であったため、Zoomでの講演となりました。当日は会場に18名、Zoomでは講師を含めて5名の計23名が参加されました。
 興味深かったお話は、
・地震発生後、公的な避難所などの体制が整うのに合わせて、健軍教会を特に福祉的なかかわりを必要とされる方々の避難所として特化して活動を続けたということと
・避難所開設に際しては、教会の役員会と女性会が積極的に動き、毎日の食事の炊き出しを担われたこと
・一緒に食卓を囲むようにしたことで避難者が孤立せずにすみ、また避難者も何らかの役割を分担して協働して生活できたこと
・近隣の小学校の公的避難所での炊き出しも行っていったこと(避難所によっては、食中毒への警戒から炊き出しに慎重であり、また物資の配布についても問題が生じていた。)
・公的避難所に小まめに行って公的な情報を入手するようにしたこと
・健軍教会では、避難されてきた方々に押し付けにならないように、しかし礼拝を一緒に守ることができたこと
等々でした。
 講演後の質疑応答では、活発な質問や意見の交換なども行われ、参加者からは、非常にためになった、新しい気づきがあったという感想が寄せられました。特に地域の防災部会の方々が参加してくださったことは感謝です。
 地震発生当時、熊本市内の各教会は被災の大小にかかわらず、支援物資の集積所や子育て世代のためのカフェの開設など、さまざまな活動を担われていました。そうした経験の蓄積を踏まえて、今後も同様の講演会などが開催され、災害時の地域における教会の在り方を考えることができれば、と思っています。

※詳細は、小泉牧師の著書「わかちあいの食卓︱熊本地震・教会避難所45日」と、健軍教会の記録「あの時わたしは…︱熊本地震と健軍ルーテル教会」に記されています。

第30回総会期第6回常議員会報告

李明生事務局長(日本福音ルーテルむさしの教会牧師)

 11月11日(月)、日本福音ルーテル教会常議員会がオンライン(Zoom)によって開催されました。以下、主な事項について報告いたします。

2025年度協力金・教職給について

 2025年度協力金は2024年度同様各教会基礎収入の10%でお願いすることとなりました。教職給に関してはベースアップ無しとした上で、俸給検討の参考としている人事院勧告において次年度子ども扶養手当が増額されたことを踏まえ、1名6千円であった子ども扶養手当を2025年度には1名1万円に変更することが承認されました。個々の教会のご理解と協力をお願い申し上げます。

第31回定期総会日程および総会負担金について

 第31回定期総会は2025年5月5日(月・休)〜6日(火・振休)の2日間で宣教百年記念東京会堂(東京教会)にて開催することが承認されました。議事日程案は次回常議員会で検討されます。なお全国教師会総会は5月7日(水)開催となることが全国教師会より報告されました。
 また前回総会では各教会の総会負担金は議員1名につき3万5千円でしたが、次回総会では1名につき4万円とした上で、一定の距離を超える参加者については一律1万円を宿泊費として支給することが承認されました。

教職者の育児・介護休業規定の件

 継続協議となっている教職者の育児・介護休業規定改正案について方策実行委員会より、この規定が持続的に活用・運用されるためには、献身者としての牧師の自己認識を維持しつつ、労働保険への加入が適切であるという報告がなされました。意見交換の上、労働保険加入を前提に今後の検討を進めることが承認されました。各教区・各個教会・各地域教師会でもご検討頂き、ご意見をお願い申し上げます。

日本福音ルーテル教会規則変更の件

 全国総会の円滑な議事運営のため教会規則第52条の一部削除、また関連機関・施設等の円滑な運営ならびに現職教職の負担軽減のため第75条の2の2内規2の削除について提案され、意見交換がなされました。本件は次回常議員会でも協議され、次の定期総会での議案として整理される予定です。

次回常議員会日程の件

 次回常議員会は2月17日(月)~18日(火)、オンラインでの開催が承認されました。

 その他、会議の中でアメリカ福音ルーテル教会短期宣教師(J3)として2024年7月より九州ルーテル学院に着任された、ステファン・ライリーさんの紹介がなされました。
 その他の報告・議事等の詳細につきましては、各教会へ配信されました常議員会議事録にてご確認ください。

2025年度 日本福音ルーテル教会 会議日程表

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