1. HOME
  2. ブログ
  3. 機関紙るうてる
  4. るうてる2024年
  5. るうてる2024年06月号

刊行物

BLOG

るうてる2024年

るうてる2024年06月号

機関紙PDF

「主の平安に満たされる」

日本福音ルーテル恵み野教会・函館教会牧師 河田礼生

「だから、人の子は安息日の主でもある。」(マルコによる福音書2・28)

 私が遣わされている恵み野教会と函館教会は、特急に乗って4時間半以上かかるほど、互いに離れています。居住地である恵み野教会で土曜日に主日礼拝を守った後に移動して、日曜日には函館教会で主日礼拝を守るというのが、私に与えられたスケジュールでした。今のところは体力に恵まれていますので、移動が苦になることはあまりないだろうと考えていました。しかし、私はすぐに長距離の兼牧を担う難しさと直面することになりました。

 4月4日(木)の夜、恵み野教会で迎える最初の主日礼拝の準備をしていますと、函館教会の方から電話がありました。それはその方の伯父の重体を伝える連絡で「今晩が山だろう」というものでした。できればすぐに出発したかったのですが、その日はすでに間に合う特急もなく、もどかしく夜を過ごしました。翌朝、この夜は持ちこたえたと連絡を受けて安心をしたのですが、すぐに出発すべきかの判断が少し難しくもありました。私はお見舞いに向かいたいと思いましたが、出発すると簡単に戻ってこられません。戻れなければ、恵み野教会は信徒礼拝となります。そんな私を後押ししたのは「私たちはこれまでも信徒礼拝をして、主の恵みに与ってきた。私たちは強いから大丈夫」という恵み野教会の方の言葉でした。函館に着くと、神様のご計画か、天に召される1時間ほど前にお会いでき、臨終を共に祈って過ごすことができました。

 さて、イエス様は安息日規定に関してファリサイ派の人々と対決します。福音書には、ある安息日に弟子たちが麦の穂を摘み、イエス様は手のなえた人を癒したことが記されています。「安息日を心に留め、これを聖別せよ。」(出エジプト記20・8)「七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。」(出エジプト記20・10)という十戒の教えから、安息日は労働をしてはいけない日と定められていました。当時の規定に従えば、麦を摘むことは労働であり、癒しについても、命の関わる場合を除いて安息日にしてはいけない行為でした。ですから、ファリサイ派の人々の言い分は規定に適っていました。しかし、安息日の本質からは逸れていたのです。安息日とは、主が「祝福して聖別された」(出エジプト記20・11)日です。それは主の安息と祝福にあずかる日であるため、その規定によって苦しめられるのであれば本末転倒です。

 イエス様は「人の子は安息日の主でもある。」(マルコによる福音書2・28)と言われました。それは、私たちの安息がただイエス様のみから来るためです。私たちの安息とは、イエス様のもとにあるのです。キリスト教会では、主日に礼拝を守ります。主日にはイエス様の祝福に満たされ、安息に招かれています。その喜びが私たちの感謝や賛美となり、礼拝となるのです。

 恵み野教会の方は主日礼拝に牧師がいること以上に、イエス様の平安が臨終の方と共にあるように祈ることを選びました。隣人を憂い、その命を尊ぶことこそ、イエス様が教えられた安息日でしょう。牧師はいられなくても、恵み野教会にはイエス様がおられたのです。私もまた、恵み野教会のことを安心して、委ねることができたおかげで、葬儀に心を注ぎ、平安を祈ることができました。さらに後日には、私は函館教会の方から恵み野教会への感謝の手紙を預かり、分かち合い、恵み野教会の皆さんはその手紙を読み、喜んでいました。

 恵み野教会も、函館教会も私も慌ただしくなりましたが、平安に満たされた安息日を過ごすことができたのです。それはすべての教会に与えられている主日です。主の安息にあずかることによって、私たちは主の祝福を受け、平安に満たされているのです。
 「主が彼らに言っておかれたことはこうだ。「これこそが安息である。疲れた者に安息を与えよ。これこそ憩いの場だ」と。」(イザヤ書28・12)

エッセイ「命のことば」 伊藤早奈

(51)「私は誰?」

「わたしの魂があなたをほめ歌い/沈黙することのないようにしてくださいました。わたしの神、主よ/とこしえにあなたに感謝をささげます。」詩編30・13

「ありがとう」
 えっなんで?すごい。なんでそのようなことが言えるのだろう?
 主人公が期限付きで一つ一つの能力を失っていく今まさにそのときでした。時間のかかり方がその主人公とは違うものの自分の変化と重ねつらく感じている時でした。主人公の変化を悲しみ、泣く声をこらえている友達の心境がよくわかるような気がしてました。
 その主人公が友人の手を借りて一生懸命歩く後ろ姿を想像したときでした。
 私の周りにあるたくさんの「ありがとう」が溢れてきたのです。山登りのとき杖をつきながら登る私の荷物を全部持って一緒に山を登ってくださった友人。大学で杖で教室に向かう途中外のスロープで転び困っていたら、しばらくしていつの間にかスロープが直され歩きやすくなっていたこと。バス停から大学までの道、杖をついて一生懸命歩く姿を見て車に乗せてくださった先生。旅行で杖で歩く私の荷物を全て持ってくださった先生。車椅子で仕事をする私のために2階にあったパソコンをノートパソコンにも移し1階でもできるようにしてくださった教会。私が説教奉仕をさせていただくときいつもは2階の礼拝堂だったのに、1階へ移してくださった教会など最近では機械の操作を教えてくださるために何時間も電話をしてくださった人もおられれば、何時間も作業してくださった人もおられます。つらくて悲しいだけ?あなたの周りには「ありがとう」がいっぱい溢れています。今のあなたが生きているから。

リレーコラム 「全国の教会・施設から」⑬

小山茂(日本福音ルーテル板橋教会牧会委嘱牧師)

 板橋教会の牧会委嘱4年目に入りました。おかげさまで板橋教会は、今年1月31日に宣教70周年を迎えました。今まで宣教された牧師先生方、信徒の方々、天に召された先逹の方々、皆さまのお働きに心から感謝いたします。鷲見達也先生を中心に纏められた宣教60周年記念誌、また45周年記念誌から皆様の宣教された意気込みを感じます。
 東海福音ルーテル教会(小石川教会)の伝道所として、ラッセル・サノデン宣教師により板橋の宣教が開始されました。1964年から伊藤文雄先生、1975年から松隈貞雄先生、1989年から中川俊介先生、1995年から滝田浩之先生に引き継がれました。2000年以降も谷口博章先生、黄大衛先生、中村圭助先生、汲田真帆先生、鷲見達也先生、後藤直紀先生、德野昌博先生、三浦知夫先生、松本義宣先生のお働きがありました。
 私が着任しました2021年コロナ感染の広がる中、対面の礼拝ができずZoom礼拝を始めました。最も感染が拡大した時は、自宅から説教とピアノの奏楽で礼拝を配信しました。IT不案内の私で説教が聞きづらいことがあり、ITが得意な方のアドバイスに助けられました。有料Zoom契約にして制限時間を気にせず、教会総会をしたこともあり、礼拝後にTV電話のように近況報告を互いにしました。板橋のような小規模の教会は一体感のある、双方向のZoomが相応しいようです。
 2022年に会堂の補修計画を進めて、屋根を耐用年数の長いガルバリウム鋼板に葺き替え、外壁の補修と防水塗装を終え、神学校から移築されたステンドグラス2枚の補修も完成しました。今年は教会のPCの買換えとホームページのリニューアルを目指しています。板橋教会の当面の課題は、教会員の高齢化への対応、新たな教会員への宣教になります。そのために若い方々を、教会に招くことが必要です。宣教70年の記念礼拝を、今年11月3日の全聖徒の日に行います。

日本福音ルーテル小石川教会
滝田浩之(日本福音ルーテル小石川教会牧師)

 小石川教会は、来年(2025年)宣教75年の節目を迎えます。1950年4月2日の「棕櫚の主日」に初めて主日礼拝を持ったことから、この日を「小石川教会開設記念日」としています。
 75年の歴史の中で「小石川教会」は様々な役割を担ってきました。1949年にオラフ・ハンセン宣教師が来日しアメリカのELC(Evangelical Lutheran Church)の「福音ルーテル日本伝道部」として、またその最初の公式な教会となる「東京福音ルーテル教会」(1952年)として、ろう者伝道の拠点教会(1972年)として、収益事業(文京カテリーナ)の事業所(1980年)として、教会名も「東京福音ルーテル教会」、「文京教会」、「小石川教会」と改名してきました。
 さて1950年に現在の教会のある土地と、日本家屋4棟(本屋、離れ、倉庫、土蔵)をハンセン宣教師は購入します。この「離れ」を「集会室(礼拝堂)」に彼は初代牧師となる河島亀三郎牧師と改造していきます。「12畳2間の建物から畳を取り除き板の間にして、紙障子をガラス戸にし、正面の壁にえび茶色のビロードのカーテンを吊り、その前に聖壇を据えて壇上に十字架を置き、一方に説教壇を整え、折り畳み椅子を板の間に置いた(要約)」と記録されています。ハンセン宣教師と河島先生が汗を流しながら楽しそうに礼拝堂を整えていったことが伝わってきます。何よりも2人が最初に手をつけたのが「礼拝式文」でした。ハンセン宣教師が持参した「式文」から「開会の祈り」、旧日本福音ルーテル教会の式文から「ざんげと恵みのみことば」、十戒、使徒信条、主の祈りをそこに織り込み「礼拝式文」が完成します。小石川教会が教会規則を整え牧師を招聘し組織化されるのは1952年です。み言葉の説教と聖餐がすべてに先んじていることを覚えたいと思うのです。この道筋はこれまでも、これからも変わることはありません。小石川教会はろう者と共に礼拝を喜んで、楽しんで守り続けることを与えられた使命としていきます。

世界の教会の声

浅野直樹Sr.(世界宣教主事 市ヶ谷教会・スオミ教会牧師)

創造の祝祭日

  3月14日から16日にかけてイタリアのアッシジでセミナーがあり、教会暦に「創造の祝祭日」を加えてクリスマスやイースターのように守ることで、天地創造と関連付けながら今日の自然環境問題の理解を深められるかについて話しあわれました。このセミナーはカトリック教会のラウダート・シ研究所主催でLWF、WWC、メソジスト、英国国教会、改革派の各協議会が参加しました。教会代表、神学者、礼拝学者、科学者らが、キリスト者は創世記の天地創造物語をこれまでどう読んできたかを、環境危機を視野に入れ歴史的に探求しました。
 LWF代表のランゲ教授は次のように述べています。「教会がこれまでたどってきた創造の神学の進展と、時にそれを重んじなかった過去を、カトリック、東方教会、改革派の兄弟姉妹と学び理解を深めることができました。」「創造論はルター神学と礼拝学において重要です。十字架なくして創造論なし、受肉なくして創造論はありません。」ランゲ教授は「飼い葉おけの木は十字架の木でもある」というルターの言葉を引用しながら、創造、受肉、十字架と復活、これら三つの信仰の基盤が「ニケア信条で告白する三位一体の真理である」と述べています。
 「受肉と十字架による創造と贖罪は、聖礼典において最もはっきり示され、ルターはそこから聖礼典の刷新を求めたのです。」「(神によって)創造された水、聖餐式でのパンとワインはイエス・キリストの生と死のシンボル。こうした物質に目を向けることで、水、土地、果物、空気を大切にしようとルーテル教会は呼びかけるのです。」
 東方教会では、9月1日を神が地球を創造した日として祝う古い伝統がありますが、近年これを見直して、創造の恵みへの感謝と創造されたすべてを守るための祈りが加わりました。今日の生態系の危機的状況に際して、教会は創造をロマンチックなこととして眺めるのでなく、その限界、脆さ、依存性を認識し、主体的に考え行動し考えていくべきであるとの見方をセミナー参加者は学びました。
 世界の教会には9月1日を「創造の日」と定めたところもあります。あるいは9月1日から10月4日(アッシジのフランシスコの日)を創造月間としています。「創造の日が正式に教会歴に加われば、三位一体が典礼において形あるものとなり、霊性についても新たなアプローチが広がるでしょう。」(ランゲ氏)
 来年2025年はニケア信条1700年記念の年。ニケア信条が多くの教会で告白されていることから、創造の日を設けることで「(ルター派の)三位一体的霊性が深められ、そこからさらに新たな言葉と実践が起こり、ニケア信条の精神の具体化へと視野が広がるかもしれません。殊に創造の危機に対して敏感で、祈りの力を理解する若い世代にとって、創造の日Feast of Creationは意義深いものになるのでは」とランゲ教授は期待を寄せています。

https://lutheranworld.org/news/ecumenical-efforts-introduce-christian-feast-creation

山内量平探訪記⑤

古屋四朗(日本福音ルーテル日吉教会信徒)

 今回の舞台は新宮です。山内量平の妹熊子が天に召された翌年の明治16年、カンバーランド長老教会のヘール宣教師から洗礼を受けた山本周作という人が、信徒伝道者となって新宮に来ました。新宮についた彼は、一人の人に出会い「私はイエスの宗教を広めるために来ました。宿屋はどこにありますか?」と聞くと、その人は「うちに来なさい。私の妹がキリスト信徒になって聖書をくれたので、教えて欲しいのです」と言いました。この人が新宮の素封家の青年大石余平で、やがて山内量平の回心に関わるのです。
 彼の妹の睦世は、3年前に大阪の梅花女学校に入学し、翌年帰省したときに、漢訳『マルコ伝』を兄に渡しました。余平はこれを読んで、何とか学びたいと思っていたのでした。こうして彼は、ヘール宣教師から受洗しました。
 余平は熱血の人で、さっそくヘールの伝道旅行について歩くようになりました。また翌年には、彼の所有地を提供して教会を建てました。今、そこは仲之町アーケード街になっています。
 明治24年、余平夫婦は名古屋で伝道中に濃尾地震のために夫婦とも圧死しました。余平の弟は、明治43年の大逆事件で逮捕・処刑された大石誠之助、遺児は文化学院の創立者・西村伊作です。余平たちの建てた教会は、現在の日本キリスト教会新宮教会で、私はその教会の礼拝に出席することができました。

改・宣教室から

小泉基宣教室長(日本福音ルーテル札幌教会牧師)

小泉 こんにちは。浅野聖子さんは、東京・山谷での炊き出しグループ、ほしくずの会に関わっておられると伺いました。どのような経緯がおありだったのですか?
浅野長年、会の代表を務めてくださった同じ教会の故赤間峰子さんを通して出会いがあり、東教区女性会によるボランティアの呼びかけもあって9年前から活動に参加するようになりました。

小泉ほしくずの会では、どのように炊き出しをなさるのですか?
浅野炊き出しは、ご飯炊き→おにぎり作り→おみそ汁作り→配食、と襷を渡すように作業が進められていきます。私は、お米を研いでご飯を炊き、おにぎり作りに来られる方々を迎えられるよう準備し、おにぎりを作るところまで参加しています。
小泉山谷と関わりながら気づかされたことや、意識しておられることがありますか?
浅野私が活動に参加するのは火曜日なのですが、普段から野宿者の方々の生活が気になるようになりましたね。この活動には、「おじさんたち」も参加なさるのですが、私にとって「当たり前のこと」でも、そうではない人たちもおられるのだ、ということにも気づかされてきました。関わりの中で大切にしているのは、この活動の主役は、「おじさんたち」だ、ということ。私たちボランティアが仕切ってしまってはいけない、ということも意識しています。会の代表の中村訓子シスターが、「『ほしのいえ』は命の尊厳を守る活動」であると書いておられて、この活動も、幼稚園で働いている自分の仕事と通じるものがあるのだ、ということも教えられましたね。

小泉最後に、大切にしておられる聖書の箇所を教えていただけますか。
浅野イザヤ書40章31節「主に望みをおく人は新たな力を得」る、です。無力さに歩みを止めてしまいそうなときにも私を励まして進ませてくれるみことばです。
小泉ありがとうございました。お働きと山谷の方々の生活が守られますように。

日本キリスト教協議会(NCC)ジェンダー正義に関する基本方針

藤原佐和子(NCC書記・日本福音ルーテル田園調布教会信徒)

  2024年3月にオンラインで開催された日本キリスト教協議会(NCC)第42回総会で、「NCCジェンダー正義に関する基本方針」(以下、ジェンダーポリシー)が採択されました。これは、NCCが2019年の宣教会議で「これからの私たちの『コイノニア』は、女性というカテゴリーに留まらず、あらゆる世代、ジェンダー、セクシュアリティに属する人々が『主体』でなければなりません」と宣言したことや、ACTアライアンスの加盟団体であることに根ざすものです。ルーテル世界連盟(LWF)や世界教会協議会(WCC)と深くかかわるACTアライアンスは、2017年に「ジェンダー正義に関する基本方針」を採択し、世界中の加盟団体にもジェンダーポリシーの策定を呼びかけてきました。
 NCCが2021年に立ち上げたワーキンググループは、アジアの教会による実践例に学び、2013年の「LWFジェンダー正義に関する基本方針」(日本語版は「ジェンダー公正への道」)、2022年の「WCCジェンダー正義に関する基本原則」などをモデルとしながら、NCC青年委員会との協働プロジェクトを通して、専門家や若い世代の声を反映させた草稿を策定しました。常議員会からのコメントをもとに改訂を重ねた基本方針案は、昨年秋の常議員会で承認され、この度の総会で採択されました。
 ジェンダーポリシーは、歴史的基礎、聖書的・神学的基礎、原則、方法論(組織のモニタリング評価、普及啓発・人財養成、組織運営体制)から構成されます。歴史と神学については筆者が、聖書については都南教会の安田真由子さんが原案を執筆しました。原則は、①正義・平和・いのち、②ジェンダーバランス、力関係を変革する、③NCCが行うすべてのプログラムにジェンダー正義の視点を、④NCC内部における研修・能力開発、⑤加盟教団・団体における研修・能力開発、⑥性的指向・性自認・ジェンダー表現・性的特徴(SOGIESC)に基づく差別の禁止、⑦あらゆる女性のエンパワーメント、⑧次世代へのエンパワーメント、⑨神の民としての巡礼、⑩性と生殖に関する健康と権利から成り立っており、国際的に見ても高い水準の内容となっています。
 総会代議員向けの事前説明会では、2011年のSOGIに関する国連人権決議以降のキリスト教界の動きが紹介され、ジェンダー正義が「神の正義」の欠くべからざる一部分である点が強調されました。今後はリーダー研修やパンフレット作成などから、少しずつ具体化に着手していきますので、皆さまもどうぞ連帯してください。

ELCAジェンダー正義コーディネーターに就任して

安田真由子(日本福音ルーテル都南教会信徒・ルーテル学院講師)

  インドネシアの北スマトラ。初めて行く場所の音も匂いも想像さえできない中、私は、そこで出会う人たちから何を思い、感じるだろうかと、期待3割、緊張7割の心持ちで、2月半ばに成田から飛んだ。何より不安だったのは、私が「ジェンダー正義コーディネーター」として2週間の出張に赴いているものの、大まかなプランしか聞いておらず、具体的な業務内容についてはよく分かっていなかったことだ。何しろ就任してまだ3カ月。オフィスは米国シカゴにあるので、普段は在宅勤務。幸い、出張中はベテラン同僚チャンドラン(最高にクールなインド人男性)がリードしてくれる。私は言わば彼の腰巾着だった。
 さて空港で出迎えてくれたのは、インドネシア最大のルーテル教会HKBP(会員数400万人超)の女性2人。長いことHIV/AIDSミニストリーを率いてきたNさんと、元々法律の分野にいたAさん。どちらも今は教会のディアコニア部門で働いている。今回の課題は、彼女たちを始め、性差別やDVなどに取り組んでいるHKBPの人たちと、ジェンダーに関する問題を解決するため何をすべきか、何ができるかを話し合い、今後3年に渡る活動計画を練ることだった。密度の濃いミーティングの中では、必要とあればジェンダーやLGBTQ+(同性愛者などの性的マイノリティ)に関して、私が聖書学者として、チャンドランが神学者として短い講義をすることなどもあった。たとえば神は人を性別や性的指向に関わらず平等に造り、愛していること。イエスは差別や抑圧にさらされる人々とこそ共に歩んだこと。彼女たちは、教会に根を張る差別や抑圧に抗うべく、正義のための聖書的・神学的なことばや概念、考え方を身につけることに貪欲だった。
 また、HKBP以外の教会や関係団体の人々とも会って話し、食事を共にしたが、出会う人たち皆がジェンダーを巡る課題と真剣に向き合い、正義のための歩みを粘り強く続けていた。中には「希望なんてない」と語る女性もいた。気持ちは分かる。差別は根強く、暴力は深刻だ。けれど、その希望の無さを共有し、手を取り合うところから、何かあたたかな原動力が湧いてくる、そんなことを感じた2週間だった。
 昨年11月、アメリカ福音ルーテル教会(ELCA)のアジア太平洋地区ジェンダー正義コーディネーターに就任しました。神の正義を求めて尽力してまいります。関心のある方はお声がけください。

「ルーテル学院、今とこれから」

石居基夫(ルーテル学院大学学長)

  日頃より、ルーテル学院大学、大学院、日本ルーテル神学校のためにお祈りとお支えをいただいておりますこと、心から感謝申し上げます。
 すでに報告させていただいている通り、今年3月に行われました理事会において、2025年度よりルーテル学院大学・大学院の学生募集を停止することが決議されました。昨年の全国総会でも大学経営が深刻な状況にあることをご報告させていただき、この間、皆さまからはご心配と応援の声をいただいて参りました。しかし、皆様の期待に応えることができず、ここに至りましたことは誠に残念であり、責任をいただいている者としては大変に申し訳なく、忸怩たる思いでいっぱいです。
 本学は、1909年に九州熊本で、牧師を養成するための日本路帖神学校として開学しましたが、のちに東京中野区に拠点を移し、1964年には大学認可を受け、1969年に現在の三鷹に移転しました。1970年代半ばに、日本福音ルーテル教会は「福音を伝え、世に仕える神の民となる」ことを決議し、大学はこの「神の民全体の教育」を担うように改革を進めました。そして、1976年に社会福祉、また1992年より臨床心理の分野における専門教育を手掛けることになり、キリスト教的人間理解を基盤とした対人援助の担い手を育てる教育と研究を展開してまいりました。これまでの卒業生たちが教会で、またそれぞれの現場、社会において今も大切な働きを担ってくださっていることは、本学の教育の確かな証であると思っています。
 しかし、近年の少子化と特に福祉関連の受験生の減少を受け、2022年度より連続して入学定員を大きく割る事態となりました。学内においては学生募集と経営的努力も重ねてまいりましたが、理事会は将来に向けた経営の見通しを立てることが難しいと考え、大学教育存続のためのあらゆる可能性を検討し、努力を重ねてまいりましたが、いずれの道も実らず、大学として責任ある対応を全うするために今回の苦渋の決断をするに至りました。
 今後、大学は今年度の新入生も含めた全ての在学生を送り出すまで、ミッションステートメントに基づき、学生一人一人の学びと学生生活の充実、将来に向けた支援という教育的使命を全うするべく全力を尽くして参ります。もちろん、日本ルーテル神学校は継続し、牧師養成と継続教育、ルーテル教会の神学研究などを整えていきたいのです。また、これまでのルーテル学院の卒業生たちの自主的研究会や同窓生の支援など、できる限りルーテルのつながりを活かしていきたいと考えています。
 教会の皆さまには、引き続きこれからのルーテル学院のためにお祈りとお支えをお願い申し上げたいと思っております。何卒よろしくお願い申し上げます。

「ルーテルこどもキャンプ」開催のお知らせ

池谷考史
(TNG委員会子ども部門長・日本福音ルーテル博多教会・福岡西教会・二日市教会牧師)

 TNG子ども部門では、8月7日(水)~9日(金)、広島教会を会場に「第24回ルーテルこどもキャンプ」を開催します。昨年は台風の接近で残念ながら中止となってしまったため、対面でのキャンプは5年ぶりとなります。テーマはこれまでと同じ、「来んさい 広島Peaceじゃけん」。これまでは小学5、6年生が対象でしたが、今年は小学5年生から中学3年生までが参加できます。8月の広島で、教会につながる仲間たちとの交わりの中で平和について学び、平和をつくる者となっていく思いを深めたいと思います。新しい友達がたくさんできる良い機会にもなることでしょう。ぜひ、呼びかけて下さり、子ども達を送り出してください。たくさんのキャンパーが集ってくれることを願っています。参加申し込みは、QRコードからお願いします。申し込みは7月7日までです。参加費:15000円。合わせてキャンプを支えて下さるスタッフも募っています。同じQRコードからお申し込みください。

日本福音ルーテル教会西教区能勢記念堂

犬飼誠 (能勢記念堂委員・日本福音ルーテル大阪教会信徒)

 かつて、クリスチャンであっても、召天後、それぞれの先祖の墓地などに埋葬され、仏教など先祖の宗教によって供養がなされているということがありました。
 「召天後も、キリスト教の記念礼拝が実施される墓地に埋葬され、天国で、再び兄弟姉妹と相まみえたい。」との祈りのもと、建築委員会が発足し、多くの西教区の牧師や信徒の尽力により、日本福音ルーテル教会西教区能勢記念堂(以後「記念堂」)は、大阪府豊能郡能勢町において、1983年に150の納骨ボックスを備えた礼拝堂として完成し、同年3月から運用が開始されました。
 この地は、元々、ルーテル関西能勢キャンプ場の一角にあり、関西地区合同のCSや青年キャンプ、修養会などが実施され、信徒が集う特別な場所、言わば「聖地」とも言えるような場所であり、そこに記念堂が建立されたことは大きな喜びでした(現在、キャンプ場は閉鎖され、記念堂だけがこの地に残っています)。
 記念堂における墓前礼拝は、春(イースターの次の週の日曜日)と秋(全聖徒主日の次の週の日曜日)の年2回実施されます。コロナ禍にあるときは、スタッフだけで墓前礼拝を守りましたが、今では、参列者数も回復し、以前のように通常30名程度、多いときは50名を超える参列があります。
 能勢は、自然に恵まれ、春は山桜、秋は紅葉の美しい風光明媚な土地です。しかし、交通の便が悪く、車でしか行けないような場所にあるため、記念堂の納骨ボックスを引き払い、別の墓地などに移骨される方があります。一方、新たにボックスを購入したり、すでに購入済のボックスに納骨をするという動きもあります。
 現在、記念堂委員会のスタッフは、委員長である大阪教会の大柴牧師を含め、4人ですが、これからも、主の御手に委ねて召された信仰の諸先輩方を想起し、生者と死者の双方の救い主であるイエス様の救いを覚える記念堂墓前礼拝を守っていきたいと思います。

日本福音ルーテル小田原教会・湯河原教会人事の件

以下の通り人事が承認されましたのでご報告いたします。
〈牧会委嘱〉(2024年
6月1日付/1年間)
長岡立一郎
 小田原教会・湯河原教会

日本福音ルーテル教会・教区常議員

2024年3月に各教区で開催された教区総会において下記の通り常議員が決議されましたのでお知らせいたします。(敬称略)

《北海道特別教区》
教区長 小泉基
(札幌教会牧師)
書記・財務兼任 岡田薫(帯広教会牧師・札幌教会協力牧師)
会計 岡村隆行
(函館教会信徒)
伝道 滝田裕美
(札幌教会信徒)
社会奉仕 松島直子
(札幌教会信徒)
教育 岩崎明子
(函館教会信徒)
教区選出信徒常議員 
松島直子(兼任)

《東教区》
教区長 松本義宣
(東京教会・板橋教会牧師)
副教区長 佐藤和宏
(藤が丘教会・小田原教会牧師)
書記 小澤周平
(千葉教会・津田沼教会牧師)
会計 鈴木亮二
(大岡山教会信徒)
財務 橘智
(東京教会信徒)
伝道奉仕 内藤新吾
(稔台教会牧師)
社会 小勝奈保子
(聖パウロ教会牧師)
教育 河田優
(日吉教会・横浜教会牧師・ルーテル学院大学チャプレン)
教区選出信徒常議員 小林恵理香
(大岡山教会信徒)

《東海教区》
教区長 末竹十大
(なごや希望教会・掛川菊川教会牧師)
書記 渡邉克博
(浜松教会・新霊山教会牧師)
会計 佐藤祥一
(岐阜教会信徒)
宣教 後藤由起
(名古屋めぐみ教会・知多教会牧師)、
石川吏志
(名古屋めぐみ教会信徒)
社会・奉仕 光延博
(静岡教会・沼津教会・富士教会牧師)
教区選出信徒常議員 佐藤祥一(兼任)

《西教区》
教区長 立野泰博
(広島教会・松山教会牧師)
書記 宮澤真理子
(西条教会・三原教会牧師)
会計 犬飼誠
(大阪教会信徒)
財務 水原一郎
(シオン教会・西宮教会牧師)
伝道・奉仕 中島共生
(下関教会・厚狭教会・宇部教会牧師)
社会・厚生 沼崎勇
(京都教会・修学院教会・賀茂川教会牧師)
教育 竹田大地
(天王寺教会牧師)
教区選出信徒常議員 三戸真理
(天王寺教会信徒)

《九州教区》
教区長 白川道生
(佐賀教会・小城教会・
唐津教会・甘木教会牧師)
副教区長 池谷考史
(博多教会・福岡西教会・
二日市教会牧師)
書記 池谷考史(兼任)
会計 山本光(箱崎教会信徒)
財務 山本光(兼任)
伝道 小泉嗣
(熊本教会・玉名教会・八代教会牧師)
社会奉仕 谷口美樹
(大江教会信徒)
教育 安井宣生
(健軍教会・甲佐教会・長崎教会牧師)
教区選出信徒常議員 宮原信孝
(久留米教会信徒)

関連記事